|
|
|
○岩田義弘1) 大山俊廣2) 畔柳久志3) 三村英也 |
|
堀部晴司 竹内健二 桜井一生 内藤健晴4) |
|
戸田均5) 門山 浩6) |
|
|
|
|
喉頭の内損傷である脱臼についてその原因や診断、積極的治療とその後の経過について報告は少ない。当院で診断が付いた20症例に ついて原因・経過などの検討を試みた。 |
|
診断は内視鏡所見を重視し、CT画像や徒手整復前後による声帯運動の改善も参考にした。 |
|
必ずしも気管内挿管だけが原因とは言えず、上部消化管内視鏡や自然発症も見られた。 |
|
|
|
|
早期に発見、早期に整復を出来た症例では自覚的改善が顕著であった。 |
|
内損傷が原因でありながら診断までに時間を要した症例は治療に抵抗し、音声などの症状の改善に時間を要した。 |
|
披裂軟骨脱臼を来す誘因の一つとして 斜位喉頭の存在が疑われた。 |
|
|
|
|
|
|
診断には病歴と内視鏡所見を重視した。 |
|
病歴特徴 |
|
突発的発症、先行する外傷、咽喉頭違和感の左右差 |
|
嗄声や嚥下時の引っかかり感の存在 |
|
喉頭内視鏡像 |
|
後方脱臼:披裂軟骨が輪状軟骨の後方に脱臼 |
|
患側声帯長の延長・薄箔(緊張)傾向 |
|
声帯突起の頭側変位 |
|
前方脱臼:披裂軟骨が輪状軟骨の前方に脱臼 |
|
患側声帯長の短縮・肥厚(弛緩)傾向 |
|
声帯突起の尾側変位 |
|
|
|
|
|
1996年4月より2005年3月まで8年間 |
|
披裂軟骨脱臼 検討対象 20例 |
|
男女比 男性 15例 女性5例 |
|
平均年齢 55.8才(±13.7) |
|
主 訴 嗄声11例 失声 6例 咽頭痛4例 異物感2例 |
|
障害声帯側
右 11例 左 9例 |
|
脱 臼
前方脱臼 7例 後方12例 喉頭外傷 1例 |
|
斜位喉頭
有 12例 無 4 例 確認不能 4例 |
|
治 療 徒手整復
18例 徒手整復のみで治癒 13例 追加治療を要した例 2例
自然治癒例 1例 |
|
|
|
|
輪状軟骨の高さで胸鎖乳突筋前縁から第2指で圧迫し、披裂軟骨に力を伝える様に操作をおこなった |
|
後方脱臼 前方脱臼 |
|
|
|
|
|
|
上部消化管内視鏡 2例 1例大声で声が裏返る 1例嗄声改善ぜず喉頭形成術施行 |
|
気管内挿管 14例 |
|
待機手術挿管 12例 7例は一度の整復治療で治療終了 4例は複数回整復術行い改善 1例は整復術で改善できず |
|
緊急救命挿管 2例 複数回整復で 改善 |
|
外傷(頸部打撲) 1例 披裂部炎症消退と共に位置運動改善 |
|
誘因なし(自然発症)3例 2例は整復1度にて改善
1例は整復後3ヶ月に再び脱臼その後整復 |
|
※17例中12例に斜位喉頭を認めた。 |
|
原因の多くが待機手術挿管であった。8年間の当院挿管手術(8460件)の0.14% 上部消化管内視鏡の副損傷として注意を有すると考えられた。 緊急救命挿管では、救命されない数も考慮するとさらに多い可能性がある |
|
|
|
|
|
|
|
脱臼方向による違い |
|
後方型脱臼 11例 |
|
一度の整復操作で 2週以内に症状改善 8 例 |
|
一度操作で改善したが、再び脱臼し複数回操作を要した例 2 例 |
|
複数回整復操作にて改善せず3年後自然回復確認した例 1 例 |
|
前方型脱臼 7例 |
|
一度の整復操作で 2週以内に症状改善 2 例 |
|
一度操作で改善したが、再び脱臼し複数回操作を要した例 4 例 |
|
複数回整復操作にても改善できなかった症例 1 例 |
|
脱臼の確認しやすさや整復治療は後方脱臼のほうが容易であった。 |
|
前方脱臼の徒手整復は操作直後の違和感の減少は顕著であったが、 数週の経過で再度症状が出現し、複数回繰り返す必要があった。 |
|
音声は整復改善直後よりもその1週後に改善していた。 |
|
|
|
|
発症から整復開始までの期間と整復回数、治療効果の比較 |
|
発症〜整復開始日 挿管例の整復回数 UGI例 自然例 |
|
0〜7日 4例 1回:2例 2回:2例 |
|
〜14日 4例 1回:4例 |
|
〜31日 1例 1回:3例 1回:1例 |
|
〜90日 4例 2回:2例 1回:2例 |
|
〜6ヶ月 1例 4回:1例 |
|
〜2年 1例 3回:1例:治癒できず |
|
※経過の十分追跡できた18例の検討
青 最終的に治癒例 赤 障害を残した例 |
|
挿管障害例は整復までの時間が14日以内で早期に改善した。 |
|
UGI後症例は治療までの時間が長く、整復のみでの治癒はできなかった。 |
|
自然発症例では時間がたっていても改善が得られた。 |
|
|
|
|
気管内挿管後の音声障害の1つに反回神経麻痺と共に披裂軟骨の脱臼を含む喉頭の関節の障害は念頭におく必要がある疾患と考える。 |
|
披裂軟骨脱臼の発見治療が遅れることにより、音声や咽頭違和感などの症状の改善が難しくなる傾向が確認された。 |
|
披裂関節の障害は発生のメカニズムは確認されたとは言いがたく、診断には注意を要すると考える。また特に誘因を認めない自然発症的なものも否定せず喉頭麻痺との鑑別を含め注意深い診療が必要と考えられる。 |
|
医療行為とくに気管内挿管により起きる頻度が確認された。当院における挿管手術件数の0.14%、耳鼻咽喉科初診数対し、0.14%に披裂軟骨障害を認めた。藤田保健衛生大学耳鼻咽喉科初診外来患者数に対する反回神経麻痺症例数が0.56%であり、頻度的にも少ないわけではな事が確認できた。 |
|
これらは術後早期に失声や嗄声にて当科に紹介となっているため発症ー診察までの時間が短い傾向にあった。これに対し消化管内視鏡後の症例では「内視鏡後の嗄声は時間と共に改善する」と説明され、改善しなかった症例が自らの判断で受診されるため受診までの時間が長くなっていた。 |
|
徒手整復は、患者に負担が少なく、また結果も早く確認できる。後方、前方の脱臼方向が確のうえ、整復することにより治療効果は高くなることが期待される。また 脱臼に対する徒手整復は診断的意義もあり疑う症例に試みることも必要と考える。 |
|
|
|
|
|
参考文献 |
|
三枝英人、田沼久美子、粉川隆行ら:後方型披裂軟骨脱臼症に対する徒手整復、喉頭 15:103〜108,2003 |
|
岩田重信、高須昭彦、桜井一生ら:喉頭外傷 −内損傷の臨床統計的観察− 、耳鼻と臨床 40:747〜753,1994 |
|
岩田義弘、岩田重信、高須昭彦ら:反回神経麻痺の臨床統計的観察 、耳鼻臨 87:511〜717,1994 |
|
加藤久幸, 桜井一生, 竹内健二, ら:披裂軟骨の三次元CT画像について 、藤田学園医学会誌 24:11〜15,2000 |
|
|
|
謝辞 |
|
本検討・発表を行うにあたり快く了解して頂いた麻酔科部長 尾野隆 先生に感謝します。 |
|
また、統計資料の準備貸し出しに協力頂いた医療情報室に感謝します。 |
|
徒手整復法の開発・改良検討に関わって頂いた当院耳鼻咽喉科外来スタッフに感謝します。 |
|
|
|